虚偽記載のきっかけは地元新聞記者からの指摘 検察側が明かす 鳩山首相元公設秘書初公判(産経新聞)

【鳩山首相元公設秘書 初公判】(1)

 《鳩山由紀夫首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」をめぐる偽装献金事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載など)の罪に問われた元公設第1秘書、勝場啓二被告(59)の初公判が29日午後、東京地裁(平木正洋裁判長)で始まった。現職首相の政治団体に対して、故人や他人名義による約4億円が偽装献金だったとして在宅起訴された勝場被告の事件が、いよいよ法廷で裁かれる》

 《他人名義の偽装献金は、鳩山首相が母親から譲り受けた巨額資金の政治資金化を隠すことなどを目的に行われたことが、東京地検特捜部の捜査などで明らかにされている。こうした偽装工作について、特捜部は会計事務担当だった勝場被告の単独犯行と認定。刑事告発を受けていた鳩山首相については、嫌疑不十分で不起訴とした。会計責任者だった元政策秘書についても、被告の虚偽記載を見抜けなかった「重過失」を認定したが、公判請求は見送り、略式起訴にとどめた》

 《野党時代には「秘書の責任は政治家の責任」などと訴えてきた鳩山首相だが、偽装献金などについては「知らなかった」と説明し、辞任もしなかった。そのため、「言行不一致」などと批判が起こった上、特捜部の捜査に対しても上申書を提出しただけで、事情聴取や取り調べを受けなかったため、国民から大きな不信感も招いた》

 《事件をめぐってただ1人、法廷で裁かれることになった勝場被告。開廷予定の1分前、午後1時29分、104号法廷にゆっくりと入ってきた。黒いスーツに黒いネクタイ。表情は硬い。ゆっくりと弁護人席の前の長いすに座った。法廷にはすでに裁判長や検察官、弁護人もそろっている》

 裁判長「それでは、開廷します」

 《平木裁判長に促されて、証言台に立つ勝場被告》

 裁判長「名前はなんといいますか」

 勝場被告「勝場啓二…」

《名前や生年月日などを確認する裁判長に、消え入りそうな小さな声で答えていく》
 裁判長「職業は?」

 勝場被告「無職です」

 《すでに公設秘書を解任されている勝場被告。現在の職業は「無職」と答えた。初公判のこの日は、罪状認否や被告人質問のほか、論告求刑なども行われて結審する予定だ。まず、検察官による起訴状朗読が始まる》

 検察官「公訴事実。被告人は…」

 《起訴状によると、勝場被告は平成16〜20年、故人や実際には献金していない人からの個人献金計2億700万円を懇話会の収支報告書に記載したほか、政治資金パーティー収入も約1億5300万円分水増しして記載。また、鳩山氏の関連政治団体「北海道友愛政経懇話会」の収支報告書に、17〜20年に実母、安子さんと実姉から受けた献金計1200万円を記載せず、政治資金パーティー収入約3千万円を水増しして記載したとされる》

 裁判長「間違っているところはありますか」

 勝場被告「間違いございません」

 《罪状認否で、勝場被告は小さな声だったが、起訴状の内容をはっきり認めた。これを受け、検察官が冒頭陳述書の朗読を始める》

 検察官「被告人は大学卒業後、会社に入り、昭和62年8月、鳩山由紀夫衆議院議員の公設第2秘書になり、平成2年ころからは鳩山事務所の経理事務を統括していました。6年1月に公設第1秘書になったが、本件後の21年6月、鳩山議員から解任されて退職しました」

 《まず、勝場被告の経歴に触れた検察官。鳩山首相のことは「鳩山議員」と呼んでいる。続いて、勝場被告が鳩山首相の東京事務所で会計事務を担当し、資金管理団体「友愛政経懇話会」の事務も処理していたほか、地元・北海道の事務所や政治団体「北海道友愛政経懇話会」の事務処理についても指示を出していたことを確認した》

 検察官「東京事務所には寄付や政治資金パーティー収入、鳩山議員から提供される資金、実母である安子さんから資金援助の趣旨で渡される資金がありました。これら資金を区別することなく一体として管理、保管し、その中から友愛政経懇話会の支出と鳩山議員公私の支出を賄っていました」

 「地元事務所で管理していた資金には、北海道友愛政経懇話会が受け入れた寄付や政治資金パーティー収入、被告人管理資金から送金される年間1億円弱があり、その中から、北海道友愛政経懇話会の支出と鳩山議員個人の支出を賄っていました」

 《政治献金や鳩山首相と実母の資金を混然一体として管理し、その中から、資金管理団体や鳩山議員の公私の支出が賄われていたという“どんぶり勘定”の実態が指摘される。首相の実母を「安子さん」と呼ぶ検察官。次に鳩山首相が母親、安子さんから資金提供を受けるようになった経緯が説明される》

 検察官「被告人は平成14年ころ、鳩山家と近い○○(法廷では実名)に対して『東京事務所の財政が苦しい』と相談を持ちかけた。○○が安子さんと相談した結果、安子さんは毎月1500万円の資金提供を承諾し、個人資産から側近の××さん(法廷では実名)を介して、『息子の鳩山議員が自由に使える資金として援助する』という趣旨で被告人に渡していました」

 「被告人は安子さんから渡される資金を、政治資金規正法上、どのような性格の資金として受け入れるか、曖昧(あいまい)なまま、安易に個人寄付や政治資金パーティー収入を水増しし、偽装する方法で対処していました」

 「友愛政経懇話会の収支報告書に、過去に寄付を受けた人の氏名や手元にあった種々の名簿、名刺の名前を無断で使用するなどしていました」

 《実母から渡された分で増えた政治資金について、勝場被告が、深く考えもせず、適当に数あわせをし、虚偽の献金者の名前などを記載していたと指摘する検察官。さらに、北海道の地元事務所で、実母と実姉から毎年150万円ずつ受けていた献金について、受領していないように偽装するきっかけとなったのは、地元新聞社の記者から実母と実姉による献金が「政治資金規正法の趣旨に反している」との指摘を受けたためだったことを明かしていく》

 検察官「地元新聞の記者から、『このような寄付は政党と政治資金団体以外の同一の者に対する個人献金の上限額を150万円と定めている政治資金規正法の趣旨に反するのではないか』と指摘を受けました。被告人は『疑念を招くことのないように、適正に取り組んでいく』というコメントを出しました」

 「しかし、平成17年に受けた150万円を返還し、寄付を受けないことにすると北海道友愛政経懇話会の資金繰りが苦しくなると考え、返還や寄付辞退を指示しませんでした」

 「収支報告書に記載すると、地元新聞から批判を受け、鳩山議員に政治的悪影響が出ると考え、18年から21年までも、収支報告書に記載しないように指示を出しました」

 《さらに、北海道友愛政経懇話会の政治資金パーティー収入約3千万円を水増ししたことについても、動機が説明される》

 「友愛政経懇話会から補填(ほてん)を受けていた北海道友愛政経懇話会に(3千万円を)記載すると、それに伴い、友愛政経懇話会の収支報告書に虚偽記載が増えるため、できるだけ金額を抑えたいと考えました」

 《検察官は冒頭陳述書を読み終えた。続いて、供述調書の読み上げなど、証拠調べが始まる》

     =(2)に続く

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